エンゲージメント・ドライブ・モデル
Engagement Drive Model (EDM)
エンゲージメント・ドライブ・モデル(EDM)は、エンゲージメントに関する複数の理論をベースに、エンゲージメントの向上を加速させるエンジンとして時代に先駆けてSEL(Social and Emotional Learning)を組織の現場に導入した実践的フレームワーク。
エンゲージメントの理論を紐解いて見えてきたことがあります。それは、
エンゲージメントは設計し、育てていくもの
であるということ。トップダウンや精神論、報酬で向上するものではありません。今エンゲージメントが高いからといって放置していても永遠に持続するものでもありません。
原理・原則に照らし合わせて現場ごとに異なる課題を洗い出し、一つ一つ丁寧に解決していく、良い状態が保たれているかを常に観察、対応し続けることで高いエンゲージメントが維持されていくのです。
ウィライのエンゲージメント向上支援スキームの基本思想であるEDMを少しだけ解説します。
1. EDMが解決する組織のお悩み
いま、組織の現場でこのようなことが起こっていませんか?
- 若手の離職が止まらない
- 業務過多で疲弊している
- 組織に一体感がない
- 指示待ち・消極的な社員が多い
- マネージャーが機能していない
- エンゲージメント向上に取り組むも現状維持
このような、いわゆるエンゲージメントが停滞している状態において、エンゲージメント向上をやみくもに掲げても、残念ながらエンゲージメントは向上しません。エンゲージメントが理想論と訴えられる声の背景にこのような状態があることは珍しくありません。
エンゲージメントが向上するための原理原則を理解した上で、組織ごとに的確にアプローチすることでしかエンゲージメントは向上しないのです。
2. エンゲージメントとは
そもそもエンゲージメントとは何なのか、そしてエンゲージメントが高いとどのような状態になるのか解説します。
2-1. エンゲージメントの定義
エンゲージメントとは、
この職場で自分の能力を活かしながら成長し、その成長をもって貢献し続けたいと思える状態
を表します。(経済産業省「未来人材ビジョン」(令和4年)を元に改変)
単なる満足ややりがいではなく、「成長」と「貢献」が循環し続ける状態であることが特徴です。
2-2. エンゲージメントが高い状態
エンゲージメントが高い状態は、以下の3つの要素で構成されます。
- 活力: エネルギーに満ち、粘り強く取り組める
- 熱意: 仕事に意味や誇りを感じている
- 没頭: 時間を忘れるほど仕事に集中している
この3つが揃うことで、人は「やらされる仕事」ではなく、「自ら取り組む仕事」へと変化します。
これと似たものに「ワーカホリック(仕事中毒)」がありますが、エンゲージメントと異なる点は、活力と熱意が相対的に低いことが特徴です。
3. エンゲージメントの条件
エンゲージメントは複数の心理的・環境条件によって成立します。偶発的に生じることもありますが、原理原則を知ることでエンゲージメントが高い組織を設計し、再現性を高めることが可能となります。過去に研究されたエンゲージメントに関する理論やモデルのうち、代表的なものを簡単に紹介します。
3-1. 意味づけ × 余力 × 心理的安全性
Kahnが提唱したエンゲージメント理論で、人が仕事に没頭するためには、次の3つがそろう必要があるという理論です。
- 意味づけ: この仕事には価値があると思える
- 余力: 心身に余裕がある
- 心理的安全性: 安心して自分を出せる
この3つの要因のうち、当たり前ですが軽視されがちなのが余力です。伝統的に日本では精神力が重視される文化が根強いですが、疲弊し、余力がない状態においてはエンゲージメントの向上が難しいものです。人材の補充、業務の効率化、トラブルの再発防止、事業の選択と集中など、余力を創るための施策も大切になります。
3-2. 自律性 × 有能感 × 関係性
DeciとRyanが提唱した「自己決定理論」という内発的動機づけに関する理論です。報酬や罰などの外発的な要因ではなく、「やりたいからやる」という内発的な動機づけが高まる要因として3つの要因が提唱されています。
- 自律性: 自分で選び、決めることができている感覚
- 有能感: できる・成長しているという実感
- 関係性: 他者と健全な関係でつながっている感覚
この理論によれば、一切裁量が与えられていなかったり、同じ仕事ばかりやらされる、社内で孤立している場合はそれだけで内発的な動機づけが抑制されてしまう(=やる気が出ない)と言えます。ちなみに動機づけの強さは外発的な動機づけに比べて内発的な動機づけが圧倒的に強いと言われていることから、内発的な動機づけを高めることがエンゲージメントの向上に欠かせないのです。
3-3. 仕事の要求度と仕事の資源のバランス
Schaufeliらが提唱した「Job Demands - Resources Model (JD-Rモデル)」。JD-Rモデルでは、エンゲージメントは“仕事の要求度”と“仕事の資源”とのバランスによって左右されることが示されています。
- 仕事の要求度(Job Demands):
仕事の難易度やプレッシャー、職場の人間関係、役割の曖昧さ など - 仕事の資源(Job Resources):
自己効力感、レジリエンス、上司・同僚からの支援、給与・雇用の安定性 など
仕事の資源が仕事の要求度を上回っていればエンゲージメントは向上し、逆に下回っていればエンゲージメントが低下します。
- 仕事の要求度 < 仕事の資源 ⇒ エンゲージメント向上
- 仕事の要求度 > 仕事の資源 ⇒ エンゲージメント低下
このモデルによれば、エンゲージメントを向上させるには仕事の要求度を下げるだけでなく、仕事の資源を増やすことも有効であるとが示されています。仕事の資源を高めることができれば、たとえ仕事の要求度が高まった場合であっても高いエンゲージメントを維持したまま対処することができるようになります。
3-4. エンゲージメントのスパイラルアップ
Fredricksonが提唱した「ポジティブな情動の拡張・形成理論」で、エンゲージメント向上により惹起されたポジティブな情動が導下線となって自ら進んで物事を試そうとしたり、他者に協力的であろうとすることで仕事の資源が増加するサイクルが働き、エンゲージメントがスパイラルアップする、という理論です。
4. エンゲージメントの向上を加速させるSEL
エンゲージメントは設計し、育てるもの。
これまでの諸理論をベースにエンゲージメント向上の設計図が描けたら、次は職場メンバーへの働きかけを通じて職場のエンゲージメントを育む。そこで効果的なのがSEL(Social and Emotional Learning:社会性と情動性の学び)。SELはエンゲージメントのスパイラルアップを加速させるエンジンとなり、効果的にエンゲージメントを向上させます。
4-1. SELとその効果は
SEL(Social and Emotional Learning:社会性と情動性の学び)とは、
自分と他者、かつ状況を理解した上で、より良い人間関係の構築と課題の解決に自律的に取り組む力を育む学習プログラム
社会人としてウェルビーイングな生活を送ることができるスキルを習得することを目指したSELは、2000年頃から全米の学校で導入され始め、数々の研究から効果が証明されています。SELでは次の5つのスキルを育成します。
- 自己理解: 自分の感情・価値観を理解する
- 他者理解: 他者の感情や立場を理解する
- 自己管理: 感情や行動をコントロールする
- 対人関係の構築: 信頼関係を築く
- 責任ある意思決定: 適切な判断を行う
これらのスキルを育むことで、次のような変化が生まれます。
- 組織への適応力の向上: 環境とのミスマッチ減少
- 学習意欲の向上: 自律的に学ぶ状態
- 学習能力の向上: 振り返り・改善力の強化
これらの効果を一例としてエンゲージメント理論に当てはめると、
- 組織への適応力の向上 ⇒ 仕事の資源の獲得(JD-Rモデル)
- 学習意欲の向上 ⇒ 自律性の習得(自己決定理論)
- 学習能力の向上 ⇒ 余力の増加(Kahnの理論)
つまり、SELによって育成されるスキルが直接的にエンゲージメントの向上に貢献することから、SELがエンゲージメントを向上させるエンジンとなるのです。
4-2. 組織に変革をもたらすSEL
SELの5つのスキルに加え、さらに存在意義(Identity)と自己効力感(Agency)の2つの軸の育成を強化すると、共同体感覚(Belonging)が芽生えます(Transformative SEL)。
- 存在意義(Identity):
自分は何者で、なぜこの場にいて、何のために働くのか - 自己効力感(Agency):
自分の行動で状況を変えられるという感覚 - 共同体感覚(Belonging):
「ここにいていい」「ここで貢献したい」という感覚
この共同体感覚こそがエンゲージメントの定義と一致するものであり、エンゲージメントの本質なのです。
エンゲージメントの諸理論をベースに設計したフレームに、SELというエンジンを載せることで、エンゲージメントの向上が加速する。
エンゲージメント設計と育成プログラムを組み合わせた実践フレームワークが、エンゲージメント・ドライブ・モデル(EDM)なのです。
ウィライはこのEDMを全てのサービスの根幹に位置付け、エンゲージメントの向上を効果的に支援してまいります。
